建築雑誌オールレビュー

代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部明子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、
   殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子

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2010年01月26日(火)

[Casa BRUTUS]2010年2月号 [Casa BRUTUS]

[Casa BRUTUS]2010年2月号・マガジンハウス・特別定価980円


◇ 特集[最強・最新! 住宅案内2010] 【★★★☆☆】
 
 2月号は、恒例の住宅特集です。「住宅案内0000(年)」というタイトルが始まったのが2005年なので、すでに6年目になりました。毎年、新築戸建て・リノベーション・集合住宅合わせて25〜30軒ほど紹介しています。今年は新築戸建て18軒・集合住宅2軒・リノベーション8軒の合計28軒。

 構成も体裁も、毎年ほぼ同じ。中身(紹介する住宅)が新しいからそれでいいのかな、とも思いますが、どうも顔ぶれ(建築家)もあまり変わらないようにみえる。そこで、手元にある直近の「住宅案内」4号(2007〜2010)を引っ張り出して並べてみました。

 さすがに4号すべてに作品が載っている人はいませんでしたが、4号中3号に登場している人はなんと7組も! 

 武井誠+鍋島千恵/TNA(2008、2009、2010)

 谷尻誠(2007、2008、2010)

 中村拓志(2007、2008、2009)

 納谷学+納谷新(2007、2008、2010)

 藤本壮介(2008、2009、2010)

 マウントフジアーキテクツスタジオ(2008、2009、2010)

 宮本佳明(2007、2009、2010)


 2号登場はほかにもいますし、6号全部合わせれば、もっと登場回数が増える人がいるかもしれません。それでも、以上の顔ぶれから、なんとなく「カーサの好み」がうかがえるような気がしました。




◇ 特集続き[愛すべき「家」をめぐる2つの物語] 【★★★☆☆】

 新築にせよリノベーションにせよ、新しい作品については専門誌でも目にする機会が多いわたしたち。建ててから年月を経た家の物語のほうが、むしろ目新しく感じます。

 ひとつめの物語は、建築家・吉村順三が1955年に若きピアニスト・園田高弘のために建てた家。当時の担当者はのちの家具デザイナー・松村勝男です。記事は「松村は当時より家具設計の精度で計画していたかと思われるほど、ディテールの収まりは美し」いと書いています。

 園田高弘は2004年に逝去、2人の息子は海外におり、現在家を守るのは春子夫人ひとり。夫人みずから、家の今後を案じて「園田高弘邸の継承と活用を考える会」を発足したそうです。家の価値を知り後世に残す努力を怠らない、得難い住まい手を得て、泉下の吉村も感謝しているのではないでしょうか。

 ふたつめの物語は、世界各地を放浪し、その先々で木を植える環境活動家・中渓(なかたに)宏一さんが借りた住まい。北海道の海を見下ろす崖に建つ、築30年のドームハウスです。もとは北海道大学で物理学を教えていた故・徳井一郎が自作したもののひとつとか。

 家の中に残されていた徳井の遺品から、彼がドームハウスの量産を目指していたことも判明しました。一辺約1.6メートルの正三角形のモジュールは、間伐材でもつくれます。木を植えてきた中渓さんは、ドームハウスに暮らしたことで、間伐材利用の新しい方向性を見出したよう。出会いの不思議を感じました。




◇ 特集続き[ドキドキ法律相談室] 【★★★☆☆】

  カーサの住宅特集では、いつもハウツーの読み物ページがおもしろい。堅苦しくなく、わかりやすく、ときにはちょっとジョークも効かせます。今年は弁護士2人を迎え、座談会方式で「法律相談室」を開設しました。

 取り上げたテーマは、土地についての問題、建築家との交渉、工務店の倒産、工期遅延の保証、中古住宅のリスク、追加工事の請求など。建築法規や契約、金銭にかかわる問題だけに全体に真面目なトーンですが、こむずかしい内容も話し言葉で丁寧に解説しています。





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[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 萩原詩子]

◇萩原詩子(はぎわらうたこ)
文系住宅ライター。就職雑誌を編集するつもりで入った会社で住宅雑誌編集部に。以来十余年、住宅とその周辺の取材を続けている。著書に「住宅リフォームの値段としくみがわかる本」、共著に「住宅購入チェックリスト」(ともに東洋経済新報社)がある。

◇建築&住宅メディア研究会
代表:細野透
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Posted by 管理者 at 11時30分

2009年12月18日(金)

[Casa BRUTUS]2010年1月号 [Casa BRUTUS]

[Casa BRUTUS]2010年1月号・マガジンハウス・定価880円


◇ 特集[建築・デザインのベストヒット100] 【★★★★☆】
 
 2009年の「ベストヒット」100項目をインターナショナルに網羅する特集。1番から57番までが建築と空間デザインに充てられています。

 冒頭、五十嵐太郎×乾久美子対談で、他を圧する評価を受けたのがレム・コールハースのOMAによる「プラダ トランスフォーマー」。ソウルに設置された仮設のパビリオンで、床になる部分を変えながら、約5カ月の間に4回、形を変えました。「09年一番のすごい建築ではないでしょうか」と五十嵐さん。「重力の方向が変わりながら成立する、というのは既存の建築とはまったく問題設定が違います」

 国内の建築では、伊東豊雄「座・高円寺」、山梨知彦/日建設計+勝矢武之/NSD「木材会館」、丹下憲孝「モード学園コクーンタワー」、吉村靖孝「ノーウェア・バット・サジマ」、「三菱一号館美術館」、隈研吾「根津美術館」、妹島和世「カリーナ」が取り上げられています。

 空間デザインでは、片山正通の一連の作品をラインナップ。今年は国内外で大きいプロジェクトを次々完成させました。国内では「NIKEフラッグシップストア原宿」、「ゴディバ ショコイスト原宿」、丸の内の「パス・ザ・バトン」。来年は、建築デザインディレクションも手掛けた「ザ・ソーホー」のオープンを控えています。

 前出の対談では、乾さんが「建築とアートがますます接近している、と感じます」と語っていました。「トランスフォーマー」が建築家による「アートのような建築」ならば、アーティストによる「建築」も取り上げます。

 もっとも、大竹伸朗の直島銭湯「Iらぶ湯」(「らぶ」はハートマーク)やオラファー・エリアソンの「サンスペース・フォー・シブカワ」(ハラ ミュージアム アーク)は、「建築」というよりは「インスタレーション」と呼ぶほうがふさわしい感じ。しかし、その境界線は限りなくあいまいになっているようです。




◇ 特集続き[デザインのベストヒット!] 【★★★★☆】

 ナンバー58以降はプロダクトを取り上げます。「デコデコでキラキラだったデザインが、実用的なものへとシフトしてきたのが09年の家具のトレンド」とのこと。「価格もそれなりにお手ごろ」。IKEAや無印良品だけでなく、ザ・コンランショップも「お手ごろ価格」のライン「ウェル・コンシダード」を出しています。

 一方、照明の話題といえばLED。イルミネーションでも大活躍ですね。LEDならではの薄さを生かした新作に加え、「トロメオ」をはじめとする定番も、LED対応を進めているようです。

 68〜70はデザイナーに焦点をあてます。ミラノサローネで発表した映像作品のような時計「リアルタイム」で注目を集めたマルティン・バース、昨春「2年以内にデザイナーを辞める」と宣言したフィリップ・スタルク、フランスのデザイナー4組。

 ほか、キーワードに挙げられるのはやっぱり「エコ」そして「リメイク」「リサイクル」「農業」など。日本の伝統工芸のリ・デザインも。最後、100番を飾るのはロナン&エルワンのブルレック兄弟による輪島塗のシリーズでした。




◇ 記事[建築とささやきを交わす内藤礼のアート。] 【★★★★☆】

 ニュース記事の中から、建築を舞台にしたインスタレーションを。現在、坂倉準三設計の「神奈川県立近代美術館 鎌倉」で内藤礼の展覧会が開催中です(1月24日まで)。「内藤礼 すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」という長いタイトル。池に面したテラスや中庭、その隣の外気が入る「彫刻室」など特徴ある建築を生かした展示が行われているそうです。

 記事では、建築家・西沢立衛が現地を訪ね、内藤と対談。

「作品と建築と自然と人のどれが主体ということではなく、連続性の中にすべてが感じる対象になればいいなと思います」(内藤)。お天気のいい日を狙って行きたい。





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[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 萩原詩子]

◇萩原詩子(はぎわらうたこ)
文系住宅ライター。就職雑誌を編集するつもりで入った会社で住宅雑誌編集部に。以来十余年、住宅とその周辺の取材を続けている。著書に「住宅リフォームの値段としくみがわかる本」、共著に「住宅購入チェックリスト」(ともに東洋経済新報社)がある。

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Posted by 管理者 at 11時30分

2009年12月03日(木)

[Casa BRUTUS]2009年12月号 [Casa BRUTUS]

[Casa BRUTUS]2009年12月号・マガジンハウス・定価880円


◇ 特集[最強のハワイ案内。] 【★★★★☆】
 
 タイトルを見て「トラベルガイド?」とお疑いの方、ご安心ください。特集のメインはちゃんと「建築」、というかハワイ流の「家」を扱っています。

 冒頭に登場するのは、溶岩の上に建つ、電気も水道もない家、屋根と床だけで壁のない「シースルー」の家・・・。いくらハワイが「楽園」でも、相当の覚悟がなければ住めなさそうです。「現代のアダムとイブ」という形容がぴったりの暮らしぶりに驚きます。

 比べれば、19世紀後半からつくられたというコンパクトな「プランテーションはウス」はぐっと住みやすそう。特集後半、マウイ島の「ハワイアンドリーム・ハウス」3軒を訪ねる記事では、それぞれのカラフルな色遣いに「南国」を感じます。

 楽園暮らしが羨ましくなった向きには、「ハワイ不動産」物件情報を。最高値は海辺の豪邸、600万ドル(=約5億4000万円)なり。一方、最安値はワイキキのコンドミニアム、約33万ドル(=約3000万円)。ただし売約済みでした。

 「20世紀ハワイを代表する建築家」ウラジミール・オシポフの記事も読みどころ。シベリア生まれ日本育ち、カリフォルニアで建築を学んだあと、就職を機にハワイに渡り、以後66年間住み着いたという異色の経歴の持ち主です。オアフ島のIBMビルディングやホノルル国際空港などの大物のほか、住宅も手掛けています。庇が深くて影が濃いあたり、日本の「夏を旨」とした家を彷彿させます。

 ほか、フランク・ロイド・ライトの設計に基づいて建てられたゴルフクラブなど「ハワイの建築プチニュース」、ハワイの伝統デザインのコラム、歴史的建物のホテル紹介など。

 レストランガイドやマップもあって、「トラベルガイド」としても使えます。最新ハワイアンCD付き。




◇ 記事[秋のデザインイベント超速報] 【★★☆☆☆】

 「カーサ」先月号のレビューで取り上げた、秋のデザインイベントのレビュー。私も最終日の「デザインタイド」会場に出掛けたものの、入り口は長蛇の列、中は大混雑。ほうほうのていで逃げ出してしまったので、人様のレビューに期待大です。

 しかし「超速報」ということもあり、これといったトレンドも見当たらなかったか、10ページのレポートはカタログのような印象。イベントが大きくなり過ぎて、散漫にならざるを得なかったのかもしれません。




◇ 記事[パントンハウスへ、ようこそ] 【★★★☆☆】

 秋のデザインイベントでも、至るところに出品されていたというヴェルナー・パントン作品。記事では、パントン自邸の写真が見られます。娘が「家そのものがディスコのようでした」と回想するその光景は、「果たしてこれでくつろげるのか?」と思うほどのカラフルさ。「サイケ」という懐かしい形容を思い出しました。

 関連の「ヴェルナー・パントン展」は、12月27日まで東京オペラシティアートギャラリーで開催されています。空間展示「ファンタジー・ランドスケープ」や3Dカーペット「ウェーブ」に、実際に座ったり寝ころんだりできるのがミソ。先の日曜に出掛けてみたら、体験展示はかなり混み合っていました。平日午前など、できるだけ空いていそうな時間帯を狙って出掛けるのがおすすめです。





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[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 萩原詩子]

◇萩原詩子(はぎわらうたこ)
文系住宅ライター。就職雑誌を編集するつもりで入った会社で住宅雑誌編集部に。以来十余年、住宅とその周辺の取材を続けている。著書に「住宅リフォームの値段としくみがわかる本」、共著に「住宅購入チェックリスト」(ともに東洋経済新報社)がある。

◇建築&住宅メディア研究会
代表:細野透
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