2009年04月27日(月)
[ランドスケープデザイン]6月号 [LANDSCAPEDESIGN]
◇特集[変わりゆく医療・福祉の環境デザイン]【★★★★☆】
医療や福祉関連の施設や環境はもっぱら診察や運営のしやすさに重点が置かれ、患者にとっての快適性という視点が省かれてきた。だが、医療や福祉が多くの人により身近になり、そこでの滞在期間が長期化しつつある昨今、医療環境におけるランドスケープに着目する病院施設が出現し始めている。この特集では、環境デザインに配慮した病院施設の事例を紹介するとともに、ランドスケープが患者の整理や心理に及ぼす様々な影響について多角的に考察。記事の構成は次のとおりである。
「リハビリテーションの常識を変える 千里リハビリテーション病院」(対談 佐藤可士和×忽那裕樹)
「日本を変える先進的な国立病院 国立成育医療センター」(対談 仙田満×辻吉隆)
「インタビュー 都市緑化技術開発機構理事長が語る 緑が及ぼす人体への影響を科学的に検証する時代」
「リポート 緑陰の下に身を置いたときの快適性の変化は? 〜秋葉原駅前広場における熱環境改善、生理・心理的観点からの改善効果の調査より〜」
「町田グランネットタウン ふれあい町田ホスピタル、シニアレジデンス町田、ふれあいの町田」
「資金運用に貢献する地域医療マネジメント メディカルモール・たまプラーザ」
「メディアとして語るホスピタルアートの生命感 東京女子医科大学付属八千代医療センター」
「リポート がん患者支援センター イギリスのマギーセンターを訪ねて」
「論考 医療・福祉に貢献するランドスケープ」
事例の中で出色なのは、「リハビリテーション・リゾート」という新しい概念を採り入れた千里リハビリテーション病院(大阪府箕面市)。デザインを手がけたランドスケープアーキテクトの忽那裕樹氏は、リゾートを「自分で自分の楽しみや癒しを発見できる場所」ととらえ、敷地内に豊かな緑を配してリゾートの雰囲気を演出するだけではなく、庭のベンチに立ったり座ったりすることで足腰のリハビリになったり、ランダムに置かれた石のベンチの間を通ることで視覚認識のリハビリにつながったりするしかけを工夫。共同棟にはシステムキッチンまで備え、快適な生活空間の中で個々の患者が自らの意志で楽しみながら体を使える環境を実現した。
「論考」では、明治大学農学部教授の輿水肇氏が、花と緑を医療環境に置くだけではなく、患者やリハビリテーターがその手入れに参加することで作業療法としての効果を高めることを解説。
ここで取り上げられた先駆的な施設が手本となり、日本の医療・福祉の環境デザインが抜本的に改革されていくことが望まれる。
◇記事〔西湖総合保全計画 文=周為+李玉紅〕【★★★☆☆】
中国浙江省杭州にある西湖は、まだ干潟だった時代に秦の始皇帝が訪れて眺望を楽しんだことが『史記』に記されている。外周15kmほどの小さな湖だが、漢代に淡水化して以来、その風光明媚な景観は多くの人を集め、西湖がなければ杭州の繁栄もないと謳われてきた。
だが、近年は湖に流れ込む4つの河の水質汚染、観光地分布の偏り、主要な観光スポットの建築の過密などが問題となり、杭州市は2002年から西湖総合保護工事を実施。約5年の歳月をかけて景観資源の保全をほぼ完了させた。本稿は、その保全プロジェクトに携わった2人の筆者による報告書である。
保全工事の全体のテーマは、「疎」。過密な建物や植物を取り除いて景観の広がりを確保し、山水の融合や、変化に富む沿岸線の美しさを表現することに努めた、とまとめられている。レポートはいささか批評性・客観性に欠け、筆者が手放しでこのプロジェクトの成功を讃えている感が否めないが、写真を見る限りでは、自然の資源をうまく活かしながら品格のある景観が再構築されたことがうかがえる。
ただし、西湖に流れる河川の生活排水による汚染をどう食い止めたのか、その河川が産業用水源ともなっていたことによる生態系の破壊をどう回復したのかといった肝心な点についての記述がまったくないのが残念。また、100億人民元(約1400億円)もの投資がなされたプロジェクトだけに、その経済効果に関する報告も付してほしいところだ。
◇記事〔KOKUYO エコライブオフィス品川〕【★★★★☆】
2008年11月、事務用品メーカーのコクヨが、東京都港区の「コクヨ東京ショールーム」の5階最上階をリニューアルした「エコライブオフィス品川」(設計 コクヨオフィスシステムほか/施工 竹中工務店)を紹介。そのオフィス機能の一部分は屋外のテラス風のスペースに置かれ、実労働日数の約3分の1にあたる年間90日程度のオフィスワークがそこで行われることが期待されているという。
一般にオフィスでは均一な照明や空調が望まれるはずだが、実際に働いた社員は、さほどの不便を感じていないという。むしろ同社では不便さを解消するために社員がアイデアを出すことが次のモノづくり・サービスにつながるととらえており、屋外環境で働く快適さだけではなく、不便さも味わってほしいと考えているそうだ。
また、同階の屋内オフィスでは在籍者が少ないと自動的に照明や空調が絞り込まれるシステムが導入されているので、屋外でのワークが進むほど、CO2の排出量が削減される工夫もなされている。
試みはまだ始まったばかりで、その効果のほどは明確には表れていないが、屋外の開放感によって創造性を刺激され、活発な意見交換もできるようになったなど、社員の評判は上々だとのこと。屋外でオフィスワークとはあまりにも奇抜だが、いかにもコクヨらしいユニークな実験として評価に値するのではないか。
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◇今野靖人(こんのやすひと)
フリーランスライター。各種広告コピーから旅行ガイドブック、落語の脚本までジャンルを問わず執筆。
◇建築&住宅メディア研究会
代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部朋子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子
Posted by 管理者 at 11時30分
