2008年07月28日(月)
[日経アーキテクチュア]7月28日号 [日経アーキテクチュア]
◆[日経アーキテクチュア]7月28日号・日経BP社・1300円
◇特集[変わる街 意気込む建築家] 【★★★★☆】
金沢、福岡、広島の3都市を巡り、個人事務所と組織事務所を中心に建築家に話を聞いた特集。
金沢──「2004年に開館した金沢21世紀美術館が、地元の街に人を集めている。若手建築家や美術関係者らによる、ジャンルの壁を超えた活動が盛んだ。さらに、14年の北陸新幹線開通を前に、東京の組織事務所との競争を意識する地元事務所もある」(リード文)。
福岡──「2011年の九州新幹線全線開通に伴うJR博多駅改築、都心部の容積緩和と、建築需要の高まりを期待する声が多い。一方、東京の組織事務所に仕事を奪われることを危惧する設計者もいる。市場が大きく変化するなかで、新たな活路を見出そうと努める地元組織事務所や、個人事務所の姿を追った」(同)。
広島──「建売住宅を共同で設計する。オープンハウスで、発注者同士を引き合わせる。バーで工務店経営者に相談し、口角泡を飛ばして議論する。広島の街には、建築家同士でつながり、顧客をつなげる建築家の姿がある。風通しの良い街で、建築家たちが緩やかにつながる」(同)。
3都市の建築家探訪記事に加えて、3本のコラム的記事が添えられる。
座談会──地域貢献や生活の豊かさも考えたい
働き方──「2拠点生活」を選ぶ理由
ウェブサイト活用──設計観を伝え、プロデュースにも利用
座談会の末尾で、金沢市の建築家、谷重義行氏がこんな発言をしている。「山も海も近い金沢という土地で、仕事と生活が一体化した建築家自身の生き方を豊かにしていきたい。そう考えています」。
谷重氏の言葉通りだと思う。誰が考えても、「東京一極集中」は日本にとっても、東京にとっても好ましくない。もっと分散する必要がある。そのためには、地方の中核都市には元気でいてもらいたい。
◇特集続き[金沢―21世紀美術館が人を集め、街を動かす] 【★★★★☆】
特集に登場する第1の都市は金沢である。
記事の冒頭で、若手建築家と美術関係者らのグループ「CAAK」が、金沢の町家を拠点に開いている交流会を紹介。21世紀美術館が金沢に人を集め、街を動かしていると伝える。
次いで、4人の建築家をクローズアップする。
吉村寿博氏は鳥取県倉吉市出身。横浜国立大学で学んだ後に、妹島和世事務所とSANAAに勤務。21世紀美術館の監理がきっかけになって、2004年に金沢市に事務所を開いた「Iターン」派だ。
戸井建一郎氏は石川県小松市出身。金沢工大を卒業後、鈴木エドワード事務所に勤務。1996年に小松市に事務所を開いた「Uターン」派である。
森俊偉氏は石川県能美市出身。芝浦工大、東京芸大で学んだ後、槇文彦事務所に勤務し、1990年に独立。1995年に金沢工大教授に就任したのに伴って、事務所を金沢に移転した「Uターン」派だ。
浦淳氏は金沢市出身。大阪工大卒業後、大林組に入社。1993年に浦事務所に入社し、2006年に代表取締役になった「地域密着」派である。
吉村寿博氏。「自分も金沢の波に乗れるのではないかと感じた」。
戸井建一郎氏。「設計事務所が情報発信する必要性を感じる」。
森俊偉氏。「東京の資本が流れてきている」。
浦淳氏。「デザイン強化、県外の仕事も視野に」。
各人が建築家としての生き方、受注の工夫、街との関わりについて語っている。
◇特集続き[「2拠点生活」を選ぶ理由] 【★★★★☆】
2拠点生活を続けている4名の建築家に、理由と成果を聞いている。そのひとり、松田達氏は金沢市出身。東京大学で学んだ後、隈研吾事務所、吉村靖孝事務所を経て、2007年に事務所を東京と金沢に設立した。
「金沢には独自の文化が残る一方で、新幹線が開通すれば東京や大阪との連続性が強くなる。そんな街で、建築家としての可能性を試して、ほかの都市に向けて情報を発信したい」。
片道約4000円の夜行高速バスで月に3回、東京と金沢を往復しているというから、なかなかハードである。
2拠点生活を続ける4名ともに、体に気をつけて「建築家道」を歩んで行ってほしい。
[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 細野透]
◇細野透(ほそのとおる)
建築&住宅ジャーナリスト。方向音痴にめげずに、1000作品以上の建築&住宅を現地取材。建築専門誌「日経アーキテクチュア」編集長などを経て、2006年から細野透編集事務所代表。著書に「ありえない家」(日本経済新聞社)、「耐震偽装」(日本経済新聞社)、「風水の真実」(日本経済新聞出版社)など。
◇建築&住宅メディア研究会
代表:細野透
会員:今井早智、岡部明子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子
Posted by 管理者 at 11時30分
