建築雑誌オールレビュー

代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、
   平塚桂、守山久子、吉川彰布、脇坂圭一

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2010年07月28日(水)

[チルチンびと]7月号 [チルチンびと]

[チルチンびと]7月号(No.61)・風土社・980円


◇特集[直す、繕う、再生する] 【★★★☆☆】

 副題は「大切にしたいものがあったから」。住まいを大切に再生しながら住み継ぐ、いわゆるリノベーションの特集だが、チルチンびとらしく、木やディテールへのこだわりが随所に見られる家ばかり4件を事例として紹介している。


  1. 東京都世田谷区・M邸
    思い入れのある家具に合わせてマンションをリノベーション。34平方メートルという小ぢんまりとした空間ながら、壁紙や建具なども自分でデザインしたりチョイスしたりして、お気に入りの住まいとなった。

  2. 三重県尾鷲市・小川邸
    自然素材を生かした製品づくりで知られる小川さんの自邸。古びた民家を譲り受け、無垢材を存分に生かした住まいへと改修した。30畳もの広さがあるウッドデッキの中央には、小さな菜園もついている。

  3. 群馬県高崎市・H邸(設計、寺林省二)
    荒れた庭にHさん自身が少しずつ手を入れてきたが、今度は庭と家が分断されていることに気づき、住まいの改修へと踏み切った。庭のイメージに合わせた外観や、外とのつながりを持った動線、自然に庭へと視線がいく開口など、居心地のいい空間に。

  4. 東京都・柳下邸(設計、加藤武志)
    部屋と部屋、1階と2階が孤立していた家を、子どもたちの成長にともない使いやすい間取りにリノベーション。耐震補強や補修を行うとともに、空間同士をつなげ、子どもたちの笑顔が溢れる、明るく一体感のある住まいへと生まれ変わった。

 2.は製材所を経営していた木の専門家の自邸だけあって、自身で基本設計と内装を計画し、大工とともにつくり上げた住まい。友人の建築士・田中大造さんにデッキデザインを依頼したり、建具を日光のドア工房の小坂憲正さんにお願いしたりと、ネットワークを駆使して、オリジナリティ溢れる住まいになっている。

 また、感心したのは3. H邸の庭造り。以前は竹が生い茂り、物置のようだったという庭を10年近くかけてHさんがかわいらしい庭へと変貌させた。様々な植物を植え、レンガを置き、ウッドデッキのある東屋までもほぼ1人でつくったというから驚きだ。




◇特集続き[直したい家具がある]【★★★☆☆】

 桐の箪笥や漆塗りの机など、チルチンびと読者に愛用者も多いと思われる和家具。昔ながらのデザインや年月を経て出る味わいに愛着が湧く反面、汚れやかけ、不具合が出やすいのも事実だ。今回の特集では、自然素材で修理を行う骨董・時代家具店「灯屋 可ナル舎」に、和家具修理のノウハウと、古いものを取り入れた空間づくりについて聞く。

 可ナル舎は、以前までラッカーやシンナーなども使って修理していたが、無垢材に塗膜をつくり、木の呼吸を止めてしまうことに疑問を感じて、試行錯誤しながらも自然素材のみで家具の修理を行うことに。「50代の人を20代の美しさに戻すのではなく、50代なりの美しさを引き出す」と、古いものゆえの美しさを生かす修理の心得には納得。

 次に、実際の修理の工程を追っていく。まずは、家具の状態をチェック。角や塗装などの美観、機能、木部の状態と、大きく3つに分けてチェックする。次に、使用する材料だが、売り物にならない家具を解体して材料として活用するほか、新しい鉄釘は塩水につけて錆びさせて使用するというのには驚いた。

 さらに、漆塗りの小箪笥と桐の刀箪笥をそれぞれ実際に修理。丁寧な仕事のひとつひとつを写真と解説入りで見せ、桐の刀箪笥などは足をつけ天板にガラス板を敷いて、テレビボードとして生まれ変わらせている。

 このテレビボードのように、本来の用途以外に暮らしに合わせてリメイクした古道具も紹介。火鉢にガラス板を載せてテーブルに、小箪笥を2つ使い、上に無垢板を載せて書斎の机に、など、個性的な家具に仕上がっている。

 また、可ナル舎の商品から、今の暮らしにも合う和家具や古建具のカタログ。全国の家具の修理対応点リストまで載っていて、全27ページ。解説が細かく、基本的な疑問にもQ&A形式で応えているため、和家具が好きな人には参考になる特集。




◇連載[語ってください、あなたの住まい観] 【★★★☆☆】

 どいかや

 自然と生き物の姿を描いた絵本で知られる絵本作家、どいかやさん。都心にも通える自然豊かな場所へ、と房総半島の真ん中に位置する千葉県長生郡に家を建てて、今年で9年になるという。国産材を使いたいことと、予算が少ないことを大工さんに告げると、節のある木などを安く手に入れ、すべて国産の檜や杉で家を建てることができたという。

 国産材にこだわった理由は、外国産の安い木材が使われて日本の森が荒れていることに疑問を持ったこと、将来ゴミになったときに自然に還るようにしたいということからだった。自分以外の生き物や環境のために、シンプルな暮らしをしたいとも語っている。

 庭も、最初は張り切って色々な花を植えていたが、この土地に生えているものを抜いて別のものを植えることに違和感を覚えて、今は自然に生えてくるものを楽しむことにしたそうだ。

 つくる絵本も、同じ題材で書いていても、舞台が住宅街から自然豊かな場所に変わり、その土地で出会った生き物が登場するようになったというどいさん。もともと自然に関心があったとはいえ、住む場所や住まいによって考え方も変わるということを、改めて知った記事だった。




[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 殿木真美子]

◇殿木真美子(とのきまみこ)
ライター。雑誌編集者を経て、結婚を機に1998年からフリーに。現在は一男一女の子育てに追われながら、夫とともに編集・制作会社を運営している。独身時代は「旅」がテーマだったが、子供を持ってからはより現実的な教育、住宅分野へ興味が移る。「都心へ移住」が目下の目標。

◇建築&住宅メディア研究会
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