2010年03月17日(水)
[新建築]3月号 [建築知識]
◇特集[リノベーションという選択]【★★★☆☆】
巻頭の建築論壇で三宅理一氏による「リロケーションが切り拓く環境思想」という論文が紹介されているが、その中で空き屋は756万戸となっており、総住宅数に占める割合が13.1%に達しているという。ここではリロケーションという場所を移動する建築について主に語られているが、同様に重要なのがリノベーションである。この特集では7つのリノベーションの事例が紹介されている。
「YA-CHI-YO 古民家リ・ロケーション プロジェクト」
山下保博×アトリエ天工人
「BRASS CLINIC」
高橋堅建築設計事務所
「IZU PHOTO MUSEUM」
新素材研究所 杉本博司+榊田倫之
「カバヤ珈琲」
永山祐子建築設計
「するところ」
近藤哲雄建築設計事務所
「Sakura flat」
若松均建築設計事務所
「山梨市庁舎」
梓設計
その中で「YA-CHI-YO」は山下氏が進めている「リ・ロケーション プロジェクト」で国内において実施に至った最初の建築だという。これは単純に、ある場所の建築を他の場所に移すだけではない。場所が変えられると同時に、そこに新たな構造、素材が付与され、新しい土地のコンテクストとあいまって異様さを醸し出している。
これは保存移築ではない。原型は軸組だが、その軸組も新たな構造補強と混じり合ってよく分からない。どこか他の土地で余っている、かたちとしての軸組とその材料が使われてるだけである。様々な場所、素材、時間が混成し、一見面白く見えるのだが、何もここまでやらなくてもと同時に考えてしまう。このプロジェクトがどう進んでいくのか見守りたい。
「カバヤ珈琲」は、「空間特性だけを拾い上げようと、固定観念を捨てて見つめ直した」とあるように、喫茶店の元の良さを生かしつつ、その良さを増幅させることに徹している。まるで元からあったかのようなその雰囲気によって、どこが改修された場所か判別しにくい。これはリノベーションの1つの手本になるのではないだろうか。
◇competition[エジプト日本科学技術大学設立プロジェクト]【★★★☆☆】
2009年冬に行われたE-JUST(Egypt-Japan University of Science and Technology)のコンペティション案が紹介されている。1等案は磯崎新アトリエ、2等案は原広司+アトリエ・ファイ建築研究所および小嶋一浩/CAt、3等案は藤本壮介建築設計事務所である。このコンペの敷地条件は写真を見る限りにおいては、あまりに過酷かつ広大でなかなか想像しにくい。
1等案は形式と意図が合致して建築が立ち上がっているように見え理解しやすいが、どこか閉じた感じがある。2等案は文章を読む限りにおいて、散逸的な要素を環境によって繋げるように見えるが、読み解くには時間がキーワードになりそうだ。3等案は「さまざまなスケールと次元が融合した場」というコンセプトのもと強く大きいものと弱く小さいものを上手くゾーニングしたもののように見える。個人的には2等案についてもう少し詳しく知りたい。
◇作品[コンゴ民主共和国アカデックス小学校]【★★★★☆】
上述のリノベーション特集やコンペティションと共にセルフビルドが紹介されている。このように1冊の中に様々な文脈やスケールが混じって紹介されているのは読む方に取って嬉しい。
このプロジェクトはコンゴの地元住民と日本の学生がセルフビルドで建てた小学校である。徹底して地元の材料を使いながら、新たな小屋組の仕組みを持ち込み開放感のある建築を実現している。ここで重要なのは、その作り方の簡単さである。小屋組の材木のメンバーは70mm×50mmと50mm×50mmで、この程度なら持ち運びに重機はいらないし、加工も楽である。大きくて重たい道具を前提にしないこの工法を含めた建築のあり方はとても示唆的である。
私たちにとって、いつから建築をつくることが手から遠くなってしまったのだろう。自らハンマーやノコギリといった、誰もが必要なら気軽に使える道具を使って建築を建てることに意識的にならなければいけない。
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◇家成俊勝(いえなりとしかつ)
関西大学法学部、大阪工業技術専門学校夜間部を経てdot architectsを共同で主宰。京都造形芸術大学非常勤講師。大阪工業技術専門学校夜間部非常勤講師。
DESIGNEASTディレクター。設計業務以外にも建築、内装、美術の施工にも関わる。
◇建築&住宅メディア研究会
代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部明子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子
Posted by 管理者 at 11時30分
