2009年11月20日(金)
[建築ジャーナル]11月号 [建築ジャーナル]
◇特集[公共建築は身の丈であるべきか] 【★★★★☆】
山本理顕氏とコンペといえば、裁判になった邑楽町庁舎の話題が記憶に新しいが、今号ではもう1つのコンペの顛末を取り上げた。小田原市の「(仮称)城下町ホール」だ。
これまでの経緯を誌面からかいつまんでいくと、次のようになる。
2005年に小田原市がエスキース・コンペを実施し、山本理顕設計工場を設計者として選んだ。審査委員長は藤森照信氏、審査員は伊東豊雄氏、本杉省三氏など。
当選案の発表後、地元から反対運動が起こり、08年の市長選挙では「ホール建設の見直し」を公約に掲げた市長が当選。09年4月、市長は議員説明会で「山本案の廃案」と「新たなホール実現」という方針を伝えた。設計者や市民に対し、市長からの具体的な説明はないという(市は、設計事務所宛に文書で事業計画の変更などの状況を説明したと話している)。
記事で触れている論点は、大きく2つに分かれる。
1つは、山本案そのものについて。非対称の壁をもち、外部に開いた使い方もできるという山本氏のホール案は、05年に市が佐藤総合計画に委託してまとめた「基本構想」を踏み越える側面があったらしい。これを積極的な提案とみるか、構想からかけ離れたものと見るか。設計に対する賛否の声を載せている。
もう1つは、計画案が頓挫した際の手続きについて。市は、「民意を受けてホール見直しをすることは民主的ルール」と語る。一方、法律を専門とする木村草太・首都大学東京准教授は、変更の過程で設計者の権利が守られていないと指摘し、植田理都子市議は市が説明責任を果たしていないと話す。
以上の記事を読んで感じたことが1つ。
コンペ当選案と市民が望む建物にかい離があるのだとしたら、そもそも“市および市が選んだ審査員”と“市民”の意識に距離があったということだろう。両者の距離を埋めるためにはどういう審査の仕組みが必要か。そんな議論も必要ではなかろうか。
◇ひと[CLOSE LINE/隈研吾] 【★★★☆☆】
負ける建築から<有機的>へ。 世界はローカリズムを求めている
「近年、国内外の大規模コンペで立て続けに最優秀賞を獲得する隈研吾氏」のインタビュー。
90年代には建築の存在を消すことを命題に取り組んだが、その後、建築を消すべきか、消さざるべきか」に悩んだ時期もあったという。ユダヤ博物館のコンペで、埋められていた瓦礫を掘り起こして形にするという体験が転機になった。
「消したいという思いと、見せたいという思いは、かつて考えていたほどかけ離れ、対立したものではない」ことに気づく。そして、これからは「謙虚な生命観に基づいた新しい有機的建築」を増やしていきたいと語る。
なお、80年代後半を振り返ったくだりでは、「アメリカン建築がグローバル化され、世界中の街を貧困にしたことへの反発から、建築を消去したいという思いへつながっていきました」とだけ書かれている。
「M2」など、バブル建築の象徴とも言われてきた氏のポストモダニズム建築について基本的にスルーすることは、業界のお約束なのかもしれない。
◇地域の話題[住まい/老朽化団地を減築などでリニューアル] 【★★★☆☆】
UR都市機構「ルネッサンス計画1」技術確立へ実証実験
都市再生機構(UR都市機構)が東京都東久留米市のひばりが丘団地で進めてきたストック再生実証試験「ルネッサンス計画1」の施工が完了した。
対象となったのは、1957年に建築され、解体が予定されている3棟80室。縦方向の3戸を2戸に再編する「1.5層化」、横並びの2住戸を集約する「2戸1化」、エレベーター新設、最上階の取り壊しによる減築などを実施した。
高齢化社会への対応をはじめとする多様なニーズに沿ったリニューアル手法の確立を目指し、新技術やコスト面での検証を行うのが目的だ。完成した住宅は10月13日から一般公開を開始している。
「実証実験に導入した新工法・新技術は、現行の建築基準法に対応していないものもあり、即実用化することは難しく、基準法の規制緩和を国に要請をしています」(UR都市機構のチームリーダー、徳中聡子さん)。
規制緩和に対する柔軟で前向きな議論を期待したい。
[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 守山久子]
◇守山久子(もりやまひさこ)
住宅・建築ライター。ゼネコン在籍後、バブル期の大量中途採用に紛れて出版社へ転職、2003年からフリーのライターに。著書に「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、「デザインエクセレントな経営者たち」(共著、ダイヤモンド社)など。
◇建築&住宅メディア研究会
代表:細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部明子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子
Posted by 管理者 at 11時30分
