2009年10月08日(木)
[住宅建築]10月号 [住宅建築]
◇特集[アトリエ・ワン 都市住宅のふるまい]【★★★★☆】
住宅建築は、しばらく特別定価の2000円でしたが、今月号は元に戻り、定価の2450円です。
今回はアトリエ・ワンの近作特集。建築史家の倉方俊輔氏による、塚本由晴、貝島桃代両氏へのインタビューでは、金沢で行われた2007年からの一連の活動を始めとして、近作を通して見えるものを追っていきます。
作品はいずれも2008年以降に竣工した、ゲストハウス1題と住宅4題。
(1)「まちや・ゲストハウス」…町家を支える仕組づくりから
(2)「ボクテイ」…大木と枝のように繋がった空間
(3)「だんだんまちや」…階段も重要な居場所
(4)「ポニー・ガーデン」…ポニーの“庭”に人が住む
(5)「生島文庫」…本の家と人の家
21世紀美術館主催イベントを期に、アトリエ・ワンでは金沢の町家の調査を行っています。思い思いに改造され、一貫性がなくなったものも町家の枠組みにもう一度取り入れた上で分かりやすく分類し、町家全体の変化の履歴をたどり、都市の変化の履歴も見出そうとする興味深い内容でした。
このフィールドワークの後、古い町家を改修し再生させたものが、「まちや・ゲストハウス」です。町家をそのまま生かすような運営の仕組「まちや友の会」をつくり、町家を使っていく枠組み自体をデザインし直たプロジェクトとして紹介されています。
格子、暖簾、通りニワ、畳、木建具などのある、町家の原型に出来るだけ戻した写真を見ると、かえって新鮮にも感じます。新たにファサードに取り付けた荒めの格子と、格子模様の暖簾が効いています。
インタビューでは格子を入れたことで経験する、町家の良さに改めてふれられています。「光の現象がすごくきれい」。「みちとの関係がつながりすぎてもいないし、気配がわかるくらいで切ることもできる」。「毎日の繰り返しの中でハッとさせられる舞台を引き出して、その積み重ねでできているから楽しい」、など。
「暮らす」こととは「繰り返す」こと。町家のように繰り返す中で毎日発見があり、その反復がうまくいくようにするには、逆に中心に人間がいない方がうまくいくとあります。
今回の一連の近作に関して引き出されたことは、手法としてモノが中心となっていることです。確かに生島文庫では「本」、ポニーガーデンは「馬」、ボクテイは「光の吹き抜け」が、しっかりした建築的中心となって見えます。
「真ん中に非人間の空間があることで、逆に人間の空間を保証し、変わらない生活が支えられている」、と説く倉方さん。
近作を眺めると、写真には人が入っていないところでも、かえって人の存在、生活の流れる時間が見えてくるのが不思議でした。
◇記事[女房とふたりで家をつくる 「落日荘」【★★★☆☆】
自分達の家を、設計から施工まで自分で建てる・・・。岩崎駿介さん、美佐子さん夫妻は茨城県にて、8年にわたり、自力建設を行っている最中です。
セルフビルドというと、ログハウスや、山小屋のようなイメージがありましたが、延床約160平米の規模で、地元の八溝杉を使用した軸組現しの大屋根、筑波山脈を望む大テラスのある自然に囲まれたダイナミックな空間は、その考えを越えてスゴい!の一言。
プレカット、瓦葺き、左官以外は基本的に自力とのことです。初めての作業ばかりながら、建具ひとつにしても、どういう手順でどう造るかを考えると、次々にアイディアが浮かんで、自分で造るのが楽しいとのこと。そうして出来た空間は、ひとつひとつ思いが入って生命力そのものを感じさせます。
「自分の住む家、食べるものは出来るだけ自分で作り、自分の足で大地に立つ」。岩崎さんは、南北問題や地球環境問題の解決に長年携わり、他人にあれこれいうのではなく、まず自らの生活を変える決心へたどり着きます。
もっとも日本家屋は家の造作に於いても、食べるものに於いても自力的な部分が少なくともあったといいます。先の特集からもちょっと引用しますが、「近代は生産というものが家の中からなくなって、家族だけの人間関係しかない」とあります。人間の精神生活は楽になった分、窮屈になっているかもしれません。
◇連載 ディテールの小匣(こばこ) 第2回[照明]【★★★★☆】
先月号から始まった連載、今回は照明に関するコラムの集合です。
(1)「LED」 文:三浦清史
(2)「削りだしのガラスソケット」 文:神家昭雄
(3)「ユハ・レイヴィスカのあかり」 文:松本淳
(4)「炭素電球」 浅田電球製作所
(5)「すまいの灯り設計」 アンドウ・アトリエ/安藤和浩+田野恵利
まず未来の照明として注目を集めているLED。「LEDは電圧をかけた時に発光する半導体素子のことである」といった基本原理の話から、「バッテリーで発光する特性を活かすと手を叩く音などで発光させることもでき、住宅の配線から解放されるのでは」、などという可能性まで述べられています。
かと思えば(4)では、エジソン発明の「竹フィラメント電球」を始めとした炭素電球の一貫製作販売を行う日本唯一の会社、浅田精造の紹介があります。炭素電球とは一瞬何ぞや?でしたが、なるほど初期の白熱灯ですね。糸状の曲げられたフィラメントが、ガラス球の中でやんわり光る姿は、なんとも懐かしいような味わいがあります。
LEDに期待する反面、暖かみのある白熱灯廃止策に不安を感じるという話もよく耳にします。実際LEDは狭い範囲の波長による発光で、自然界にはなかった光です。その種の光が人間の神経へどういう影響を及ぼすのか。当面は他の光源と混用する配慮もいるのではとのこと。
こういった目にみえないディテールも含め、進化する生活の灯りをどう設計していくか。10年ひと昔から1年ひと昔へ。建築環境はどんどん進んでいます。
★この雑誌を購入する[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 北原さと子]
◇北原さと子(きたはら さとこ)
建築設計家。京都の外れで育ち、大学で勉強した後、山本良介アトリエで「京都建築道」を修行。京都の良さを身に染みて感じるようになりました。2005年に北原さと子建築設計室を設立。現場1000回。とにかく通う!が私流です。
◇建築&住宅メディア研究会
代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部明子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子
Posted by 管理者 at 11時30分
