建築雑誌オールレビュー

代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部明子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、
   殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子

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2010年02月09日(火)

[建築知識]2月号 [建築知識]

[建築知識]2月号・エクスナレッジ・特別定価1890円


◇特集[間違いだらけの『コストデザイン』]【★★★★☆】
 金銭トラブルは他人ごとじゃない!


 「いま問われるコスト調整力」と、冒頭に掲げている。設計者がコスト調整力を得るための、見積りに関するノウハウを提供する特集だ。

 住宅工事に関するコストの成り立ちを解説し、概算や詳細の見積りを設計者が早い時点で把握していくための工夫例を紹介する。

 概算については2つの方法を提示している。それまでの自作の仕様を基に算出する佐川旭建築研究所の「実例統計分析法」。施工者を先に決めて基本設計の時点で詳しい見積もりを出してもらう、ノアノア空間工房とリモルデザインの「特命概算法」。

 詳細見積りでは、森健一郎氏(森建築設計)が工事ごとの見積り術を伝授する。仮設工事や木工事から、内装工事、給排水・衛生設備工事、雑工事まで。「高精度な見積りに木拾いは不要」、「標準寸法なら壁面積係数が便利」など、簡略化できるポイントと見逃しては成らないポイントを整理してくれる。

 このほか、ローンの使い方など、顧客にとって重要な事項についての解説も並んだ。

 実は今回の特集は、2009年9月に下された高裁判決を振り返るところから始まっている。予算額を大幅に超過した設計案を提示した設計者が、「債務不履行にあたる」とみなされた判決だ。

 係争にいたった経緯に対する第三者の見方はさまざまだろう。ただ、「社会一般がより消費者重視の方向へとシフトしつつある昨今、これまでどおりの『コスト感覚』で設計を進めていくことは、もはや許されなくなりつつある」と、建築知識は警鐘を鳴らす。

 今号で紹介している手法を実務に取り入れるかどうかは別としても、「他人ごとではない」のは確かだ。




◇付録ソフト[超早!木造概算見積りソフト]【★★★★☆】
 根拠ある概算を素早く出せる!


 CD−ROMの付録に、2つのエクセルデータが入っている。

 1つは、タイトルになっている「超早!木造概算見積りソフト」。もう1つは、「このまま使える! 別途工事費・諸経費プレゼンシート」だ。

 前者では30以上のシートを用意している。面積や建物高さなど、建物の基本的な情報を入力するシート。入力値を基に概算見積りが出てくるシート。単価などの設定を変更するシート。その他参考データや工種別の項目ごとに算出できるようにしたシートなど。

 後者では、本体工事前から本体工事後までに必要な別途工事費、諸経費を時系列に並べている。「解体費」に始まり「引っ越し、仮住まい費用」、「ケーブルテレビ導入費」、「火災保険」など、見逃しがちな費用も列記して、簡単に建築主へ説明できるようにした。

 いずれも、お役立ち度の高そうな内容だ。概算見積りソフトでもそれなりに入力の手間はかかりそうだが、それは仕方ないところか。




◇新連載[INDEPENDENCE DAY] 【★★★☆☆】
 有名アトリエからの独立 永山祐子


 「現在活躍中の建築家・設計者の独立開業秘話」を紹介する連載が始まった。第1回の登場者は永山祐子さん。青木淳建築計画事務所で4年務めた後に独立し、ルイ・ヴィトン京都大丸店の外装デザインで一躍脚光を浴びた。

 独立資金は100万円弱。家賃4万円、六畳間の木造アパートで事務所を開設。迷っている時は、頭の中の「ミニ青木」さんに相談していた・・・。

 リアルな体験談は、断片を拾い集めるだけでも面白い。

 ところで現在50代や60代になった建築家たちから聞く昔の苦労談に比べると、永山さんの話はどこか飄々と感じられる。時代の違いなのか、あるいはキャラクターの違いか。





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[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 守山久子]

◇守山久子(もりやまひさこ)
住宅・建築ライター。ゼネコン在籍後、バブル期の大量中途採用に紛れて出版社へ転職、2003年からフリーのライターに。著書に「家族と財産を守る耐震リフォーム」(週刊住宅新聞社)、「デザインエクセレントな経営者たち」(共著、ダイヤモンド社)など。

◇建築&住宅メディア研究会
代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部明子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子

Posted by 管理者 at 11時30分

2010年02月08日(月)

[LiVES]2-3月号 [LiVES]

[LiVE]2-3月号・ライブス・980円


◇第1特集[住まい&ライフスタイルカタログ2010]【★★★★☆】

 都会暮らしに郊外や自然の中の暮らし。持ち家に賃貸。家族と、一人で、シェアハウスの非家族系も…。いろんな要素が並んだ、バランスの取れた特集です。

 リポートを掲載順ではなく、タイプ別に並べてみました。

<新築戸建て>

1.サーフィン・カフェ・ロフト…ライフスタイルを充実させるための家
(神奈川県・鎌倉市/高橋邸、設計・石井大吾)

2.家族の変化や子育ての成長に合わせて育て上げる住まい
 (神奈川県・三浦郡/葉山の家、設計・湯浅聡介、小沢卓、山本芳、倉石修)

3.住空間は屋外化する!? 庭の中にリビングがある住まい
(愛知県・名古屋市/守山の家、設計・谷尻誠)


<マンション・リノベーション>

4.お気に入りインテリアショップと作る趣味を極める空間
 (東京都・目黒区/中島邸、設計・石川容平)

5.物件選びから不動産購入までを専門家がサポート
 (東京都・渋谷区/梶原邸、設計・城戸輝哉)

6.将来性も考え築浅マンション。プチ・リノベーションでムリせず理想叶える
 (兵庫県・尼崎市/山中邸、設計・岩田雅希)

7.住環境狙うならヴィンテージマンションが狙い目
 (神奈川県・川崎市/斜景の棲家、設計・村田基幸、安田綾香)

8.「おひとりさま」ライフは家を買ってもっと楽しくなる
 (東京都・世田谷区/Y邸、設計・佐々木一也)


<自然派の住まい>

9.JetMinMin(インテリアデザインユニット)/静岡県・浜松市

10.岡部文彦(ファッションスタイリスト)/東京都・世田谷区

 シェアハウスやマンション一棟丸ごとリノベーションなど、「こうした選択肢もあるよ」といった提案も含めると、12リポートに。

 あえて共通項を探すと、フローリングの床に窓は大きく、部屋はきっちり仕切らない。時々板張りや凹凸タイルで壁を遊んだり、壁を取り払ったりガラス壁にしたりと開放的なバスルーム…。

 そんな中で「守山の家」は変わり種。屋内に石を敷き詰め、緑を茂らせて庭を造り、その真ん中に透明ガラスで囲んだリビングがあるというプランです。

 「屋内にいて屋外を感じるからこそ、開放感がある」と、設計者の谷尻誠氏の弁。坪庭の発想に通じますね。にしても大胆。出色のアイディアです。

 それぞれの住まいの特徴を明確にしていることでカタログとして成り立ち、同時に、住まい手がどんな暮らしをしているのか、イメージを喚起させる内容となっています。




◇第2特集[コレクターに学ぶ収納術]【★★☆☆☆】
――収集と収納、両方を解決する技とは?


 コレクターというよりは、“モノ持ち”といった住まい手が3組登場します。

1.収納にしまうモノで空間を変える
  京都市・左京区/Light well House(設計・林敬一)

2.ディスプレイスペースとデッドスペースの活用に注目
  東京都・世田谷区/下北沢helixO邸(設計・原田賢一)

3.見せる収納のアイディアと生活を楽しむ仕掛けが満載
  大阪市・北区/今高邸(設計・岩田雅希)

 靴や本、CDなどを日々使うモノの収納だから、基本は「手に取りやすさ」か。ゆえに、収納方法よりは、人と収納物との距離感に学ぶことがありそうです。

 収納スタイルとして秀逸に感じるのが、リポート2の、扉の一部がオープンになった下足棚。ディスプレイ棚を下足箱に融合させたことで玄関先がすっきりとし、見せたいモノの存在がポップアップしています。

 後半は、「アイディア満載!コレクターたちの収納スタイル」として、バックナンバーからピックアップした8つの事例と、こだわりの収納アイテムの紹介。こちらで紹介されている収納スタイルの方が、個性もアイディアも、より光っています。




◇新企画[この街に住む(1)池尻大橋]【★★★☆☆】

 街の中のお気に入りスポットやショップを写真で紹介しても、「この街」に住む人の住まいの写真はなし。

 誌面で語られているのは、どうして「この街」を選んだのか。どうやって「この街」と出合ったのか。実際に住んでみての「この街」との付き合い方は――などなど。

 そう、「この街」の魅力を住人の生活動線や目線から浮き彫りにする、一風変わった新企画です。とはいえ、街紹介の情報は世の中に氾濫しています。LiVESの軸からずれた展開だから、このページの面白さが出ているのかも…。

 これでもか、これでもかっ!と、ステキな住まいの実例を次から次へと出してくるLiVES。冒険ものの街頭紙芝居ような活気のある誌面にあって(この活気、結構好きですが)、地味なまとめ方のページは、かえって新鮮。

紹介する街のエリアをバラけて、回を重ねていって欲しいですね。




[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 大津なほ子]

◇大津なほ子(おおつなほこ)
フリーランスライター。住宅設備機器業界誌、出版業界紙記者を経て、1995年からフリーに。書店訪問、旅情報、生涯学習者へのインタビューで全国各地を歩く。近年、住宅設備から器へと興味を広げて建築分野を勉強中。

◇建築&住宅メディア研究会
代表/細野透
会員/家成俊勝、大津なほ子、岡部明子、北嶋祥浩、北原さと子、黒崎敏、神徳香子、今野靖人、殿木真美子、萩原詩子、平塚桂、守山久子


Posted by 管理者 at 11時30分

2010年02月04日(木)

[住宅建築]2月号 [住宅建築]

[住宅建築]2月号・建築資料研究社・定価2450円


◇特集[吉本剛 祖型としてのBARN]【★★★★☆】

 関西で活動されている建築家・吉本剛さんの「BARN」と名付けられた住宅シリーズの特集です。「BARN1」から「BARN7」まで、7題(計画案1題を含む)が一挙に紹介されています。
 「BARN」とは、「納屋」、「物を納めておく小屋」、「簡単な造りの小さな建物」と訳されます。農家の玉葱小屋や牛舎、養鶏場などが持つ機能美に学ぶ、という吉本さんは、不必要なものをはぎとり、質素な材料を使った素朴で単純な住宅つくりに挑戦されています。

 納屋や小屋は、「要求される機能を満たすための仕掛けが即物的で潔い」。「建物の用途を考え、必要なことは何かということを、素直に尋ね解くことを教えてくれる」、と語ります。必ずしも小屋をイメージするような造形を作ろうということではなく、この精神が建築をつくる時のベーシックな考え方となっているようです。

 これらBARNシリーズは、柱梁を露出させているだけでなく、工事中の建物にも感じる、外の気配が交じったような感覚を不思議とどこかに持つ家がいくつかありました。特に「BARN3」(竣工1993年)では、部屋内に露出した柱や間柱の外部側に、木摺りの板が張られ、隙間から光が透ける構造体だけで成立しているような環境をつくっています。

 その「BARN3」で座談会が行われています。居住者の音堂さんは、吉本さんの言う玉葱小屋を見て、必要なものしかない用の美だと思ったそうです。その生活自体も即していて、住んで17年空調機無しで過ごし、冬はすきま風が入ってきて寒いと思うこともあるそうですが、「10月頃、この家は今の時期最高」で、「ソファで寝て一瞬それがあるというのが幸せ」なのだそうです。

 極端な寒暖は堪え難いと思いますが、四季を毎日肌で感じ楽しむ生活は、人間が自然に対し鈍くならないための本質の部分に思えます。用の美とは単に簡素、素朴ということでなく、人が根源的に豊かでいられる本質が必要だと感じました。BARNの考えは、本質を見極める羅針盤にもなりそうです。




◇特別記事[フランス文学者・平岡篤頼の蔵書を納める小さな書庫]【★★★★☆】

 軽井沢の別荘地に建てられた内藤廣さん設計の小さな書庫、「平岡篤頼文庫」の紹介です。最近の特別記事では、竣工年がひと世代以上前の建物紹介が目立ちましたが、今号の書庫の竣工は2008年です。

 早稲田大学で、長年教鞭をとられた平岡さんは、フランス文学の研究者。2005年に他界され、書庫の依頼は夫人からという事です。平岡さんが翻訳されてきた、ヌーボー・ロマンと言われる「新たな物語り」にまつわる話を軸にした内藤さんの文章は読みやすく、すっと入りこめます。

 書庫の大きさは、幅3M、長さ7Mあまりの、切り妻型の平屋建て。いままで取り組んだ中でもっとも小さな建物だと述べられています。杉板を25ミリずつ隙間を開けて横ルーバーにした外壁から光が漏れて、1箇所夫人作のステンドグラスが嵌め込まれています。

 また書庫は、築40年以上になる既存母屋との間に、デッキをはさんで逆L字型になる形で配置されています。森の緑色との対比を意識したという書庫の外壁は、沈んだ赤い鉄錆色をしていて、母屋の赤茶色、さらに赤い実をつけるナナカマドの植栽と馴染んでいます。まるで以前からあったかのように見える佇まいです。

 ヌーボー・ロマンとは筋書きや、人物の固定的な描写を避け、読み手が主体的に何かを感じ取るものだそうで、古典的な「物語り」の構造を廃しているという中々難解な文学のようです。一方建物における「物語り」とはなんであろう、と話は展開していき、建築は生来「物語り製造装置」という機能を持っているという話も面白いです。

 「新たな物語り」と建物の物語り。読み終わっても、余韻が残るテーマでした。そもそも物語りとは何ぞやなどと考え続けると、頭がゆらゆらしてクラゲのようになりそうです。




◇連載 欧羅巴建築見聞記 第9回[旧フランス国立図書館]【★★★★☆】
 
  すこぶる本好きという訳でもないのですが、本や本棚のある空間には、人をわくわくさせたり、心を揺さぶる何かしらの力を感じます。前記事のような、個人の蔵書空間や、また本屋さんなどもそれぞれ潜在する魅力があり、もはや国民皆の本の遺産を納めた国立図書館ともなると、ある種教会のような神聖さ、崇高さのある空間が実にハマると思います。こういう空間も必要だとまさに思う瞬間です。

 今回紹介されているパリの国立図書館は、ドミニク・ペロー設計の「新国立図書館」でなく、1968年、アンリ・ラブルーストの設計により誕生した「旧国立図書館」です。以前自分が旅行した際、当時工事中の「新」の方を必死で見に行った覚えがありますが、「旧」の方にもなぜ行かなかったかと悔やむ、崇高で美しい空間です。

 この中でも最も有名な「ラブルースト・閲覧室」は、内部に9つのドームを持ち、比率的に繊細な鋳鉄の柱が支えています。各ドームにある天窓から光がそそがれ、机上に並ぶパステルグリーンのシェードランプが気品を際立たせています。最近ではグーグルアースでかなり細かい空撮写真が見れるとのことで、天窓のある位置などもよくわかるそうです。

 連載著者の栗田仁さんによると、今回の取材は、一筋縄でいかなかったそうです。取材不可の部屋があることや、誓約書にサインなどはまだしも、英文での取材依頼にはいっさい返答がなく、仏文で依頼してやっと返ってきたというのが、フランスらしい一面を感じました。前記事に加えてフランス繋がりで、文化的なものを垣間みる号でもありました。





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[今号の評者、建築&住宅メディア研究会 北原さと子]

◇北原さと子(きたはら さとこ)
 建築設計家。京都の外れで育ち、大学で勉強した後、山本良介アトリエで「京都建築道」を修行。京都の良さを身に染みて感じるようになりました。2005年に北原さと子建築設計室を設立。現場1000回。とにかく通う!が私流です。
                                                           
◇建築&住宅メディア研究会
代表/細野透
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